
『あせらずあわてずあるがまま 子育てに活かす仏さまのこころ』
大平 光代 著
友久 久雄/著
本願寺出版社/刊
定価1,080円
今、ここで、あるがままでいい
説み進めるほどに、温かく癒される本である。実際にお日にかかったわけではないのに、お二人に受け容れられている気持ちになってくる。そんな対談集である。
対談されているのは、児童精神科医の友久久雄さんと弁護士の大平光代さん。大平さんが、ご自身の波乱の半生を描かれた「だから、あなたも生き抜いて』は、ベストセラーになっており、「読んだ」という人も多いだろう(私もその一人である)。対する友久さんは、多くの親子が、遠方から、カウンセリングや発達援助を受けるために訪ねるお医者様である。このお二人には、中央仏教学院(京都市)の通信教育で仏教を学んだという共通点がある。
大平さんは、ダウン症の娘さんを出産された後、仕事の依頼を全てキャンセルし、子育てに専念されたそうだ。娘さんの障がいをすんなり受け容れられたのも、子育てに専念すると決められたのも、「仏教を学んだからだと思う。」とおっしゃっている。そして、「障がいをもつ子どものお母さんたちが元気になれるように」という思いから、この本を作りたいと思われたそうだ。その言葉通り、元気がもらえる本だ。「自分の努力でどうにかなること、どうにもならないことがあって、ならないことの方が世の中には多い。だから親も子も努力とか精神力とかをむやみに強調しない方がいい。」肩の力が抜けた。仏教の教えに基づいた温かい言葉が、たくさん詰まっている。
本のサイズといい、文字の大きさといい、子育て真っ最中の忙しいお母さんたちが手に取りやすいようになっている。そんなところにも、細やかな配慮を感じた。
(評・栃木県鹿沼市立北押原中学校教諭 清水 美智子)
(月刊MORGENarchives2015)